【③手術当日 2025年9月の記録】
いよいよ心臓手術の日を迎えました。
朝5時半に起床し、体温・血圧・体重を確認。いつもより少し緊張しているはずなのに、昨晩は不思議とぐっすり眠れました。
「これから長い旅に出るような気分」──そんな静かな覚悟の朝でした。
手術前の準備と、口の中のケア
手術は午前9時から。
8時には手術着に着替え、院内の歯科を訪れます。
心臓の手術では、口内の細菌が気管を通じて感染症を引き起こす恐れがあるため、口腔ケアのチェックが欠かせません。
いつもの歯磨きでは意識しない部分まで丁寧に診てもらい、「ここまで来たか」という実感がじわじわと湧いてきました。
家族と先生の説明を聞く──3つの選択肢
8時半には妻と父が到着。執刀医の先生から最終的な手術方針について説明を受けました。
二日前に受けた経食道心エコーの結果をもとに、手術方法は次の3つの可能性があると伝えられました。
- 自己弁修復手術
(大動脈弁を残しつつ、人工血管で補強する方法) - ロス手術
(大動脈弁の位置に自分の肺動脈弁を移植し、肺動脈弁には提供弁を移植する) - 人工弁置換手術
(ブタなどの生体弁、または機械弁に取り替える)
①か②になることを想定していますが、③になった場合は「生体弁で」とお願いしました。
まだ47歳という年齢もあり、できることなら①か②──とくにロス手術が可能であれば、という思いでここ大阪の国立循環器病研究センターまで来たのです。
手術リスクと、覚悟の時間
リスク説明もありました。
どんな心臓手術でも死亡率はゼロではなく、今回の場合は術後30日以内の死亡率0.5%、重大な合併症の発生率5%とのこと。
数字で聞くと重く響きますが、国循の実績を信じて、不思議と大きな不安はありませんでした。
むしろ「ここまで来た」という安堵の方が強かった気がします。
手術室へ──静かな覚悟と眠りの瞬間
説明が少し長引き、大急ぎでオムツに履き替えて手術室へ。
テレビドラマでしか見たことのない光景が目の前に広がり、次々と看護師さんたちが自己紹介してくれました。
意外と広い部屋、たくさんの人と機械が手術台を囲んでいます。隅の方のデスクで主治医の先生がパソコンを眺めているのが見えます。
思っていたよりも小さくて少しひんやりした手術台に横たわると、点滴針が左腕に刺されます。
「好きな音楽を流せますが、どうしますか?」と聞かれ、無難にJポップをお願いしましたが、
その音が僕の耳に入ることはなく、意識はストンと落ちました。
いよいよ、長い旅の始まりです。

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