大動脈弁閉鎖不全症の手術前にやっておくべき準備リスト

手術前の準備

〜僕が心臓手術までに実践したこと〜

【2025年7月の記録】

大動脈弁閉鎖不全症の手術が決まった日、病院からの指導で手術日までにやっておくことをもらいました。「後で後悔しないように、少しでも自分でできることをしておこう」
そう思って取り組んだのが、術前の体づくりと生活の準備でした。

ここでは、僕自身が医師や理学療法士から指導を受けて行った内容を中心に、心臓手術を控える人に知っておいてほしい準備項目を紹介します。


① 術前呼吸訓練

〜手術後の呼吸をラクにするために〜

心臓の手術は胸骨を切るので、術後に呼吸が浅くなりがちです。
肺をしっかり膨らませられないと、肺炎などの合併症が起きるリスクも。
その予防のために行うのが「呼吸訓練」です。

手術が決まった日、簡単な説明動画を見ました。「手術日までに呼吸の訓練をしておいてください」

【すぼめ呼吸】
①鼻から息を吸う(2秒)
②人差し指を立てて唇を軽く閉じ、口からゆっくりと指に息を吹きかける(4秒)

【腹式呼吸】
①仰向けになり、軽くひざを曲げて立てる。手を胸とお腹にそれぞれ置く
②鼻から息を吸い込んで、お腹が膨らむのを手で確認する
③お腹の力を抜いて、口を窄めてゆっくりと息を吐く

🔹 感じたこと
「息を吸うだけ」なのに、回数を重ねると体が熱くなってくる。
実際に手術後は息を深く吸うと胸の傷が痛みます。しっかりと腹式呼吸ができれば胸骨への刺激が少なくすみ落ち着いて呼吸ができました。もっと練習しておけば良かったと後で思いました。

② 呼吸筋ストレッチ

〜胸・背中・脇を柔らかくする〜

胸の筋肉が硬いと、呼吸の動きも制限されてしまいます。
術後は胸を開いたり上半身を捻るような動作に痛みを感じるため、術前のうちから「呼吸を助ける筋肉」を柔らかくしておくのが大事です。

【肩の上げ下げ】
①足を肩幅に開き、リラックスして背筋を伸ばす
②鼻からゆっくり息を吸いながら、ゆっくりと両方の肩を上げる
③口からゆっくりと息を吐きながら肩の力を抜いて下ろす

【背中と胸のストレッチ】
①両手を胸の前で組む
②鼻からゆっくりと息を吸いながら、腕を前に倒して背中を丸めていく
③口からゆっくりと息を吐きながら腕を戻し背筋を伸ばす

【お腹と脇のストレッチ】
①足を肩幅に開いて、右手を頭、左手を腰にそれぞれ置く
②鼻からゆっくり息を吸う
③頭に置いた右手を持ち上げるように、ゆっくりと息を吐いて身体を左に傾けていく
④手を入れ替えて反対側も同じように行う

呼吸を意識しながら行うことで、胸郭(きょうかく)が柔らかくなるのを感じます。
手術直前まで続けておくと、術後の呼吸訓練にもスムーズに入れます。

🔹 感じたこと
普段の呼吸で意識することのない筋肉ですが、非常に大切な役割を担っています。これらの筋肉の可動がしっかりと機能していれば、術後の呼吸にも好影響となります。術後はとにかく動けないので、しっかりとほぐしておいて損はありませんよ。

③ スキンケア(皮膚の清潔と保湿)

〜小さな肌トラブルも侮れない〜

皮膚の状態が悪いと、術後の傷口から細菌が入り込むリスクが高くなるそうです。また、術中から術後にかけて、体のあちこちに点滴やチューブなどがついています。固定するテープの粘着液によるかぶれや床ずれの予防にもなります。皮膚のトラブルと侮るなかれ、ひどくなれば入院の延長になったりもするようです。
僕はその日から、風呂上がりには保湿クリームをしっかりと塗るように心がけました。上半身はほぼ満遍なく塗り潤いのある肌を目指しました。

🔹 感じたこと
40代とまだ若いので元々皮膚の状態は悪くなく、さらにスキンケアをしておいたおかげで手術後のテープかぶれは全くありませんでした。「皮膚を守る」ことも、手術準備のひとつなんだと実感しました。

④ 歯の治療・口腔ケア

〜見落としがちな感染予防〜

心臓手術前のチェックで意外と大事なのが「歯」。
虫歯や歯周病菌が血液に入ると、心内膜炎という怖い合併症を起こすリスクがあるそうです。
人工呼吸器を出し入れするときにぐらついた歯があったりすると危険なのもあります。

僕も病院での国循での歯科受診の時に「左下の詰め物の中が少し気になりますね、必ず歯医者へ行って治療を完了しておいてください」と言われました。
この歯科受診がなかなか大変でした。すぐ翌日には地元の歯医者に行きました。手術の事情も説明して治療がスタートしましたが一度では終わりません。通算5回ほど通うことになり、治療が終わったのが手術の前の週ギリギリでした。詰め物も新調、歯石も取ってもらい口の中は完璧な状態となりました。

🔹 感じたこと
「歯の治療が心臓と関係あるの?」と思っていましたが、とても重要なこと。
弁膜症を患った人は、歯科治療の際は必ずそのことを伝えないといけません。歯科治療の際に口の中の菌が血液中に入ってしまい感染性心内膜炎を発症するリスクがあります。場合によっては歯科治療の前に抗生物質を服用することも。
口の中はキレイに保っておくことが最重要です。

⑤ その他の準備も忘れずに

そのほか以下の項目もやっておくと良いかと感じました。家族とも共有して万全の状態で手術に挑んでください。

項目内容
体力づくり毎日15〜30分のウォーキングで体力維持。術後の回復が早くなります。術後の筋力低下は思った以上。なるべく体力はつけておきたい。
禁煙・禁酒手術後の肺や創の回復を妨げないために、少なくとも1か月前から。とはいえ酒は守れなかったなぁ
栄養管理タンパク質・ビタミンC・鉄分を意識して、創の治りを助けます。料理を作ってくれる奥さんと連携です。
便通リズムの調整麻酔後は便秘になりやすいので、整えておくと入院中が楽です。
メンタルケア不安な気持ちは自然なこと。家族や医師と話す時間を大切に。僕の場合は不思議と落ち込むこともなく、淡々とその日を迎えれました。

手術前に何をするかで、術後の回復は驚くほど違ってきます。
どれも「小さなこと」ですが、自分の体を整えるという意味ではとても大きな一歩。

僕自身も、これらの準備をしていたことで、術後の呼吸リハビリや体の回復がスムーズに感じられました。
これから心臓手術を控える方の参考になれば嬉しいです。

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